喉の高さと発声の関係 【ハイラリとファリンジル】

ボイストレーナーのJUNです。

ミックスボイスの習得過程で、声帯を薄く使えるようにしたいからとトレーニングしていると、一緒に喉頭が上がって詰まって苦しいと感じるため、このトレーニングはあっているのかと不安に思う人がいると思います。

ハイラリンクスとロウラリンクス

ハイラリンクスとは喉頭の位置が高い状態で、ロウラリンクスとは喉頭の位置が低い状態を指します。

わかりやすい感じとしては、食べ物を飲み込む瞬間がハイラリであくびする時がロウラリですね。

最近のJ-POPでの歌唱はハイラリンクス傾向で歌っている方が多く見受けられます。

少しさかのぼればマイケルジャクソンやスティービーワンダーといった歌手もハイラリンクス寄りだと言えますが、洋服を着るように選択肢としてのハイラリンクスはあると思います。

しかし健全な発声という意味では、ハイラリンクスでもロウラリンクスでもなく普段の喋り声くらいの位置で歌唱出来る事が理想的な本来の自分の声です。

ファリンジル系とフート系

ファリンジルとは、細く鋭い声の出し方で、声帯を極限まで薄く使っていける方向です。

喋り声で近いのは黒柳徹子さん、或いは志村けんさん扮するひとみばあさんの声でしょうか。

一方でフート系は輪郭がボヤけて少しこもった感じの声です。

野原しんのすけの声に近い感じです。

ファリンジルはハイラリンクス傾向になり、フート系はロウラリンクス傾向になりますが、それぞれミックスボイスを習得する過程では、大切な要素となります。

ハイラリになるのは悪い事か

ハイラリンクスの危険な要素として、舌骨から顎にかけての筋肉に過剰な力が入ってしまい、声帯の働きが悪くなる可能性が挙げられます。

いわゆる下顎に力が入る状態ですね。

過剰な力みが良くないのは確かですが、近年ではこれらの筋肉も高音発声の助けになる事が発見されています。

あるJ-POPシンガーとセス•リッグスとのレッスン

当時人気絶頂だったある若手のダンス&ボーカルユニットのボーカルの1人がハイラリに苦しめられていた時に、ハリウッド式ボイストレーニングとして名高いセス•リッグス氏のレッスンを受ける機会があったそうです。

セス氏はハイラリの彼に、敢えてハイラリに成らざるを得ない、ファリンジルのエクササイズを取り組ませたそうです。

ちょっと詳しい方ならわかるかもしれませんが有名な『ネイネイ』のエクササイズです。

セス氏の理屈はこうだったそうです。

声が詰まるのは、ハイラリだからではなく、声を太くしている事やその事による過度な力みが原因だと。

ならば声帯が薄く使えれば、余計な力は抜けるから、ハイラリも解消されるはずだと。

つまり、喉が上がり詰まった状態では余計に力が入ってしまいそうな気がするファリンジルボイスを声帯を薄く使えるようにする事を優先するために敢えてエクササイズとして行ったという事ですね。

事実、ハイラリや余計な力みの改善が見られたようです。

このエピソードを聞いた時は、私からするとちょっと想像を斜め上を行く考え方だなとビックリしました。

つまり、ミックスボイスを習得する過程においては、ハイラリになったとしても、声帯を薄く使える事を優先した方がいいという事ですね。

しかし、トレーニングはやみくもにやっても効果はないばかりか、悪化させる場合もあります。

声の状態に合わせて、内容と目的を理解して、適切に取り組む事で最大限の効果をうみます。

自己流は判断を間違える危険もある事を理解しておく事は大切です。

また、声帯を薄く使えると言うことは、単にミックスボイスで高音域を獲得するためというようり、声をグラデーションのように切れ目なく広い音域で使えるようにする上では大切な要素のひとつだと思います。

高音域だけでなく、低音域にも声量だけでは表せない声の豊かさが加わります。

ボイストレーナー JUN

声に何度も泣かされた過去を持ち
生徒と心から歌う喜びを共有する日々

大手の音楽教室で講師経験後に独立。
入会率と継続率の高い優秀講師としてレッスン手法をセミナーで紹介される。
中学・高校の音楽科教員の経験からレッスンのわかりやすさというところでの評価を受けている。
これまでに、現役シンガー、ボイストレーナー、音大生(音大入試)、オーディション対策など、数多くの人数を指導。また企業からの依頼を受けアーティスト育成も行っている。

レッスンしてきたことのあるジャンル:
J-POP・洋楽・PopRock・ミュージカル・
Classic・民謡(発声指導のみ)

東京都言語聴覚士会準会員・中学高等学校音楽科一種免許保有
修了講義:”Belting &Effect” ”Motor Lerning Theory in Vocaltraning” “Classical Singing” “Collaborative work with Vocal coach and SLP”

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