ボイトレで本当に歌が上手くなれるのか

ボイストレーナーのJUNです。

おかげさまで日々多くの方をレッスンしていますが、そんな中で最近感じたことを今回の記事にしてみました。

ボイトレはどんなことを行うのか

ボイストレーニングといえば歌が上手くなるために受けに行きますよね。

ボイトレを受けたことがない人にとっては未知の世界だと思います。

ペットボトルなんかを使って特殊な練習をするのか、変わった声の出し方で発声練習をするのか。

実際にペットボトルを使うと効果的なこともありますし、側から聴いたら変な声に思うような声も出すかもしれません。

おそらくは、そのことによって高音が出る、とか、声量がアップする、とか、ビブラートがかかるようになる、といった効果が出るのだろうと考えるかもしれません。

練習方法は無数にある

実は上に挙げた高音、声量、ビブラート、この3つだけでも練習方法がたくさんあります。

最終的に身につけば良いわけですから、その人に合った形で声を壊すようなことでなければどんなアプローチでも良いといえば良いと思います。

ボイトレはメソッドと言える体系化された発声のトレーニングが確立されています。

もちろんスクールごとに考え方は違い、効果も様々です。

いずれにしても、トレーニングするのは生身の人間だとういうことです。

何か1つのメソッドを同じように行ったからといって同じ効果になるわけではないのです。

一つの発声エクササイズで効果が出にくいのに無理やり取り組み続けるよりも、他のアプローチで試して効果を見て、合った方法を探ることが良い場合もあります。

また、生徒さん自身が上手くいかないと感じている原因が、違うところにあることが結構あります。

お腹から声を出せていないような気がする、ということを仰る方がかなり多いですが、それがパワーのある伸びやかな声を出したい、ということだとすれば、そのために必要なのは腹筋ではなく、声帯の働きや、口の開け具合で共鳴を調整すること、あるいは息の吐きすぎが原因の可能性だってあるかもしれません。

声が出る=歌が上手いではない

そもそも声量が上がることや、高音が出ることと、歌唱力が必ずしもイコールではないということです。

柔らかい声が魅力的な人もいれば、豊かな低音がそれだけで存在感ある人もいます。

つまり、ボイトレには一つの正解がないということです。

しかし、自分で歌っていて気持ちが良いとか、好きな歌手の歌を聴いてこの歌い方がかっこいいという風に感じることがあると思います。

それがセンスであったり、直感と言えるようなものです。

そこに自分の好みがあるので、そういう感覚を大切にすると、自分がどうなりたいかが段々見えてきます。

そうするとボイトレでも課題が明確となりトレーニングも無駄なことを行わずに済むようになります。

その時に、高音が出せるようになりたい、とか、ビブラートがかかるようになりたい、と必要性を感じれば、トレーニングを重ねる事によって段階を経て叶ってきます。

ボイトレでできることは何か

ボイトレでは一般的にイメージされる発声全般に関してはほぼトレーニングによって習得もしくは改善可能です。

声の出し方で困っているほとんどの事は、かかる時間に差があっても解決していけます。

が、歌唱力という点で言うと、発声面だけでは解決できない部分がどうしても出てきます。

表現力の面とでもいいましょうか。

リズム感や、音程に対する感覚などです。

もちろんこれらもトレーニングが可能です。

人によっては、リズムや音程に関するトレーニングを強化する事で歌が上達する場合があります。

ボイトレで出来ないことはあるか

トレーニングできないのは、音楽を聴いてどう感じるか、微妙な感覚であるセンスの部分です。

センスは自身でたくさんの音楽に触れて色々な聴き方をしていく中で形成されていきます。

そのことが、声の自由度が高まった時に、歌唱力へと結びついていき、個性にもなっていきます。

歌だからこそ意外と重要

あとは、発声練習を真面目に取り組むこと自体は素晴らしいことですが、歌っていて心地良いとか、楽しいとか、しっくりくるとか、そういった前向きな心や身体の状態に近づけることが、上達する上で大切になってきます。

トレーニングを重ねていく中で、そういった感覚に近付いていけることにもなりますし、その感覚が返って発声により良い影響を与える相乗効果となります。

ボイトレの正解

ですので、多少発声が荒くても、気持ちよく歌えているとか、しっくりくる心地よさがあるとか、そういうことを基準におくと勝手に声があるべきポジションに働いてくれることがあります。

嬉しくて思わず『イエーイ!!』と声を張る人に、正しい発声でと考えている人はいないでしょう。

しかし、案外そういう時に声量も高い声も出ていたりするのです。

そして身体はリラックスして解放されています。

そういった日常の中に、声が出やすくなる、あるいは表情豊かな声を出すヒントが溢れています。

レッスンでは発声機能を高めるエクササイズを取り組みつつ、総合的にみて必要に応じて生徒さんそれぞれにあった内容で取り組んでいくことになります。

1人の生徒さんであっても、日によって体調が違い、気分も違い、声のコンディションが違うのは当然です。

なので、そういったことも考慮していきます。

そうするとどうでしょう。

もはやボイトレに一つの正解などあるはずがないことがわかりますよね。

とてもシンプルな上達の極意

でもそう言う心づもりで、少しづつ地道に練習を続けていけば、前より声の音色に種類が増えたとか、高音の音色に輝きが増えた、とか小さな変化に喜びを感じながらトレーニングを積み重ねていくのが日常となっていき練習自体が楽しくなるのではないかと思います。

すると継続することはそんなに苦しいことではなくなるのではと思います。

そして振り返った時にいつのまにか、歌唱力が上がっている事を実感していきます。

日々の練習でも、発声を集中して丁寧に取り組む日もあれば、好きな歌を気持ちよく歌う日があったって良いわけです。

それも立派な練習なわけですから。

ボイトレで何が変わるのか

ボイトレで声の出し方が変わると、歌いにくいと感じていた箇所が無理なく歌えるようになります。

するとその次に、そのフレーズをどんな音色で歌おうか、という歌い方の選択肢が増えるようになります。

いつも大声でしか歌えなかった箇所を柔らかい声で歌える、とか、いつもひっくり返っていた箇所をパワフルに歌えるとか。

そうなると、一つのフレーズでもその時の気分で色んな歌い方ができるって、楽しさしかないですよね。

発声が良くなるということは、選択肢が増えるということでもあります。

同じ曲でもその時によって感じ方が違えば、歌い方が変わったって良いんです。

人間だもの。

例えば声を壊してるとかじゃないけど、いつもより声が太くて高音が出ないならば、いつも張ってるとこをあえて裏返して繊細に歌ったっていいじゃないですか。

それが出来るのが選択肢です。

そういうものだと思うと、歌が上手になるためには一生懸命練習はしますが、歌うこと自体が苦しいということはなくなるのではないかと思います。

もちろんそんな単純な話ではないかもしれませんし、歌は奥が深くて結局どうすればいいの?ってなることも多いです。

色々わからなくなったら、楽しく歌う。

そこに戻りたいですよね。

これだけは注意したい

最後にひとつだけ気をつけておきたい事があります。

声に明らかなトラブルを抱えている人は歌うことをお休みするか、音声外来に行くか、正しくトレーニングして健康的な歌声を取り戻す必要があります。

そんな時こそボイトレに来ると良いと思います。

ボイストレーナー JUN

声に何度も泣かされた過去を持ち
生徒と心から歌う喜びを共有する日々

大手の音楽教室で講師経験後に独立。
入会率と継続率の高い優秀講師としてレッスン手法をセミナーで紹介される。
中学・高校の音楽科教員の経験からレッスンのわかりやすさというところでの評価を受けている。
これまでに、現役シンガー、ボイストレーナー、音大生(音大入試)、オーディション対策など、数多くの人数を指導。また企業からの依頼を受けアーティスト育成も行っている。

レッスンしてきたことのあるジャンル:
J-POP・洋楽・PopRock・ミュージカル・
Classic・民謡(発声指導のみ)

東京都言語聴覚士会準会員・中学高等学校音楽科一種免許保有
修了講義:”Belting &Effect” ”Motor Lerning Theory in Vocaltraning” “Classical Singing” “Collaborative work with Vocal coach and SLP”

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