ボイストレーナーのJUNです。
今回は、短期間で上手くなるにはどんなことに気をつけたら良いかについて考えてみました。
ボイトレは長期的にやったほうが良い面と、場合によって短期間でも上達できる面があります。
目的によってポイントを絞って取り組めば歌唱力アップへの近道となりますので参考にしてみてください。
目次
そもそも歌が上手いとは
これはもう、正解は一つじゃないと思います。
上手いとか下手という物差し自体がどうなのか、という話にもなってくるかも知れません。
そして歌が上手いことと感動するしないということが必ずしもイコールでない場合もありますね。
皆さんの中には中学校の頃、校内の合唱コンクールなんかで歌った時に感動したという思い出のある人もいるかも知れません。ではプロシンガーの歌から受ける感動と何が違うのか。
様々に考えられることはありますが、いずれにしても『感動した!』ということは紛れもない事実です。
そういったことを深掘りするのは別の機会として、今回は聴いている人が上手いと感じる要素について練習で上達できる可能性のある部分について挙げてみたいと思います。
声が良い
これは、第一印象に大きく影響を与えるのではないかと思います。
音楽の特徴、歌詞の内容は少し聴かないと判断が難しいと思いますが、声は一声出しただけでも何かしらの印象を残すと思います。
声に魅力を感じる、あるいは特徴的で思わず聴き入ってしまう。
声を聴けば誰かがわかる、というようなシンガーもいますね。
それも個性的という意味で声が良いということかも知れません。
人を惹きつける要素としては大切な部分です。
表現力豊か
これは表現力が一体なんのことを指しているのかということがポイントになってきます。
声が良くても、物足りないと感じる時、音楽的な表現力が弱い可能性があります。
音楽的な表現力とはなんでしょうか。
表現力はセンスによるところが大きいですが、センス自体はレッスンで身につけるのは難しく、自分の興味のある音楽、またそれ以外の音楽も幅広く触れていく中で育つ部分が大きいと思います。
しかしレッスンや自主練習の中で表現力を磨くためにできることとして、歌い回しもそうですが、リズム感については磨いていくことが可能です。
曲にあったリズムの取り方ができているとそれだけで格好がつくことがあります。
声と表現力、この二つの柱が歌唱力を印象付けると言えます。
良い声とはどういうことか、について深掘りする
良い声の定義とはなんでしょうか。
これはジャンルによって求められることが違ってくる部分はあります。
それぞれのスタイルに応じて自由に声を出せることが理想と言えます。
もし、全てのジャンルに共通する部分があるとするならば、日常の喋り声を基準にするということです。
話し声の延長に音程をつけていくような感覚で歌えることは自分らしく魅力的な声にしていくのみならず声をコントロールしていく上でニュートラルなポジションとなります。
そのために喋り声からトレーニングした方がいい場合や、歌のためにボイトレすることで喋り声が良くなる場合などさまざまなパターンはもちろんあります。
いずれにしても歌声と話し声はかけ離れていない方が健全と言えます。
そして高音が出る、声色の種類がたくさんあるということもテクニックとしてはあった方がいいでしょう。
しかし、音域が狭いから歌えないとは限りません。今持っている音域の中で自分の魅力を出せるような曲を選んで歌えば無理に高音開発の長期的なトレーニングがなくても可能です。
自分の声で歌う大切さ
歌は日常会話と違い特定の音程とリズムで声を出せる必要があります。音を伸ばしたり短く切ったりということも必要でしょう。
そういう意味では出しやすい発声というのはありますが、歌う時と、話す時の声がかけ離れている場合は、逆に不自由になっている可能性があります。
歌だから歌用の発声というふうに、どこかよそ行きのようにしてしまうと、自分の声のサイズ感と違う声を作ろうとして無理が生じ、結果として歌いにくい原因になることがあります。
選択肢として意図的に可愛い声にしたり、息っぽい声にすることもあるでしょう。
しかし、基本は話し声の延長で歌える方が、本来の自分オリジナルで魅力的で個性的な歌声となります。
自分本来の声を見つけるための歌詞の朗読
歌の歌詞を朗読してみてください。
その時にリズムや音程がついてしまいませんか。
それは『歌う用の声』に引っ張られている証拠でもあります。
誰かに本を読み聞かせるようにでもいいですし、会話やセリフのようでも構いません。
そうやって読めるようになったら、話し声の音の高さよりちょっと高いところで、単音で良いのでお経のように読んでみてください。
そうやって、実際に歌う音域付近まで少しずつ上げて行きます。
歌の音域でも話している感覚だと自ずとテンションが上がらざるをえないですが、ちょっと高いテンションで話しているような感覚があれば完璧です。
それから、実際に歌うリズムや音程に寄せていきます。
段階的にやっていくととても歌いやすくなるのが実感できると思います。
この取り組みによって出なかった高音が出るようになるというものではありませんが自分の出る音域では自分らしく歌えるので充分魅力的です。
しかし、この感覚のままテンションをどんどん上げていくことで、高い音に届くことがあります。
あくまでテンションが大事で、力まかせでないことがポイントです。
テンションが上がらない時は、その曲のテンポに合わせて体を動かしていく、手拍子をしてのっていくことも助けになると思います。
そういう意味では良い発声というより自分の声で歌うこと、歌にあったテンションにしていくことが短期的には歌が上手くなるコツになっていくといえます。
身体でリズムを取れるようにする
これは先に言ったテンションを上げることと、重なる部分がありますが、リズムを身体で感じれることが歌が上手い印象に聴こえるかどうかの鍵になってきます。
リズム感はその曲を特徴づける要素になります。
リズムは音の長さや強弱が規則的、周期的に繰り返されることで現されています。
それを感じるためには歌のバックに流れている楽器からその特徴をキャッチして自分の体でそのリズムを感じられることが大切です。
歌はバックに流れているリズムを補完することで曲を成立させるようなイメージを持つと曲がとても躍動的になってきます。
基本の練習
基本となる拍子(多くの曲は4拍子)を足(座っている場合はかかとを浮かして刻むなど)で取り、手でその他のリズムを叩ける(裏拍)練習が基本になります。
それが規則的に出来るようであればそれを行いながら歌ってみます。
立って行うときは膝をダウンさせながらリズムをとっても良いと思います。
膝や足全体で感じたリズムが胴体を通って喉まで伝わってくるような感覚があると声でリズムを出しやすくなってきます。
身体でリズムがスムーズに取れて歌えるだけで歌の印象は大きく変わります。
長期的、中期的、短期的な目標
高音を出せるようにしたい、声の大きさをコントロールしたい、枯れない発声にしたい、といったことは長期的なトレーニングが必要になってきます。
また、中期的には声の成長段階に合わせた曲を選んで取り組むことで、その時々にあった歌唱力を整えていくことができます。
短期的には、今持っている声を活かすこと、リズム感を整えていくこと。
この二つに絞っていくことが効果的ではないかと思います。
今持っている声を活かすという意味では、先に述べた喋りごえの延長で歌えるようにしていくことです。
また、歌は歌詞の言葉によって歌いにくい母音や子音といったことがあり、発声を完璧にと思わなくても発音の工夫次第では短期的に変わることもあります。
そして余裕があれば歌い回しの工夫をする。そしてさらに余裕があれば音程を正確にする。
意外に思われるかも知れませんが、音程は極端に外れていなければ聴いている人の印象という意味ではリズムや発声といったことよりは正確さを求めなくても大丈夫かも知れません。
もちろん正確に越したことはありませんが。
ちょっとした工夫でうまくいくこともあります。
ぜひ試してみてください。