ボイストレーナーのJUNです。
今回は、発声練習では出来るのに、歌になると出来ない理由とその対処法を記事にしてみました。
発声練習の内容が適切かどうかを疑う
例えば曲に出てくる最高音が発声練習でギリギリ出る高さなのか、余裕を持って出るのかで、そもそもの
『発声練習で出来る』
の意味が変わってきます。
発声練習の内容が、一瞬その高さを出すようなものでは、実践では活かされない場合があります。
逆に言えば、一瞬かするのがやっとの状態で、その音域が出てくる曲を歌うというのが、そもそも選曲の問題を疑った方がいいかもしれません。
どうしても、その曲を歌えるようになりたい!と思う事もあると思いますので、少しでもそれを可能にしていける内容をこの後に書いてきますが、自分の声を成長させたいのなら、声に合った選曲はとても大切だという事は忘れないでください。
歌いにくい音域の滞在時間の長い発声練習を行ってみる
曲の中で歌いにくい音域周辺を攻略するための発声練習メニューとしては、その音域の滞在時間が長い発声練習のメニューを組むことがポイントになります。
例えば、こんな感じのオクターブアルペジオで発声練習をしているとします。
この音階だとそれぞれの高さは一瞬しか出しませんよね。
しかし、曲では一定の音域を縫うように歌うメロディはしばしばありますよね。
そのため、例えば以下のような練習を行うといいと思います。
曲全体の平均的な高さ辺りを重点的に行いながら、次第に高さを上げていき、曲の最高音より少し上まで出せるように練習するとかなり余裕を持って歌えるようになります。
敢えて半音上げて歌ってみる
また、サビの高音などで、どうしても歌えない高さがある時、キーを下げて次第に本来のキーに近づけていく練習は効果がありますが、思い切って、実際のキーより高いキーで歌う練習も効果があります。
日本語は歌いにくい
日本語は歌にすると母音が直線的になります。
英語は『ウィー』とか『ノウ』など、母音が動く言葉が多いため、それが発声の安定に活かせる場合が多くあります。
また、発声の安定に活かせる子音も多くあります。
日本語は『あ•い•う•え•お』が高さによって、少し明るくなったり暗くなったりしても会話として成立します。
しかし、その許容範囲の広さが発声の不安定要因になってる事が多くあります。
そして、ここ最近の日本語のポップスでは、ワンフレーズに沢山の言葉が入っている事が多いです。
それらの言葉の母音を統一して発声の安定を目指そうとする事がかえって力みを生む事も考えられます。
曖昧母音の有効性
声帯が健全に機能していれば、力みは生まれないと思いますが、その理想だけを目指すよりも、発声の改善過程では複合的に整えていく方が実践的な場合があると思います。
歌で優先するべきは、先ずは声帯が健全な働きをすること、その次に言葉という風に2段回で考えるのも1つの考え方だと思います。
歌う時に話声位を基準にする事は大切です。
しかし、舌が緊張すると喉の奥に引き込まれます。
正しい声門閉鎖と舌の働きを分離させます。
引き込まれると声帯の働きを阻害します。
声帯を働かせる事と、舌が力む事が混同している場合が多くあります。
舌の発声に与える働きは、様々な議論もあり、舌の力も発声に良い影響を与える側面があるとも考えられています。
いずれにしても大切な事は、声帯の働きと舌の働きを分離していく事です。
歌詞の発音が声の働きを妨げているならば、まずその妨げを取り除くという発想は時として効果的です。
歌詞の母音を全て曖昧母音を通過して二重母音のように動かす練習はおすすめです。
歌詞の中の母音の前に全て曖昧母音をいれます。
əa əe əi əo əu
こんな感じでレガートで滑らかに母音をぼかしてベタっとダラダラと歌います。
曖昧母音寄りレガート唱法のままだといわゆる声楽っぽく聴こえるかもしれません。
というか、オペラの発声の特徴であり、ポップスとの違いのひとつになります。
なので、最終的にはフレーズの中で歪みを作りポップス寄りにしていきます。
speech level(話声位)に持っていく事が最終的なポジションだとしたら、その過程で言葉が声の働きの健全さを妨げている可能性を考え、取り除いてから、言葉を構築するという段階を踏んでも良いと考えます。
いかがでしたか。
発声練習は、声をより良くするためのエクササイズですが、曲に応用出来る内容という視点を持つとより効果的だと思います。
発声練習の工夫と、発音への意識を大切に取り組んでみてください。
きっと変化があると思います。