ボイストレーナーのJUNです。
今回のタイトル『自分の声が嫌い』とは、なんとも強烈なタイトルだと思いつつ、そう感じる人は多いかもと思い、今回のテーマにしてみました。
先に結論を言っておきます。
自分の声が嫌いと思ってる方。
好きか嫌いかは主観なので、周りが良い声と言ってくれても自分では納得出来ないといった場合もあるかもしれません。
しかし
その声が、果たして本当に本来の自分の声なのかどうか、という事をいちど疑う必要があるかも知れません。
では、本題に入っていきます。
目次
何を隠そう私は自分の声が嫌いだった
ボイストレーナーをしていますが、もちろん歌う事が好きだったわけで、音楽大学入って勉強もしました。
しかし、やればやるほど、歌うのが苦しく、自分の声も好きになれませんでした。
大学卒業後は自分に合う先生を探すのに何年もかかりました。
それだけ、ボイストレーナーを探すのが至難の技だったわけです。
ボイストレーナーは沢山いますが、おそらく今でも自分に合うトレーナーを探す事に苦労しているボイストレーナー難民は結構いると思います。
しかし、ボイストレーナーは、本来ジャンルに関わらず、発声指導のプロフェッショナルなはずです。
生徒にとって合う合わないは、そのトレーナーの指導が、経験やスキルに偏りがある事に起因している面もあるのではないかと思います。
そして、発声を指導してくれるボイストレーナーと、曲の歌い方などの表現を教えてくれる先生もまた役割が違うため、その辺りがわかりにくいのもあるかもしれません。
私自身は、求められれば両方のレッスンが可能ですが、どちらかというと発声をメインに指導を行っています。
えーと、話がかなり横道に逸れてしまいました…
私自身は、親身に向き合ってくれるトレーナーを見つけてからは、少しずつ解決もされましたが、決定的な解決に至るトレーナーがみつかるまでにさらに時間がかかりました。
もちろん、自分でも原因を探す努力もしてきました。
そして今は自分の声を受け入れられるようになってきました。
また、その過程で得た事が、同じように悩む人の役に立てると思っているため、良い経験だったと感じていますし、私のレッスンの強みともなっています。
自分の声のどこが嫌いだったか
ボイストレーナーとして、自分の声の嫌いなところを晒すのはちょっと気合いがいりますが…思いつくまま書き出してみます。
•少し鼻声っぽい喋り声
•少しこもって、モヤッとした喋り声
•苦手な発音があった
•人前で歌うと声が震える
•人前で喋ると声が震える
•歌うと一本調子で抑揚がつかない
•歌い出しが苦手
•音程が不安定
•ビブラートが自然にかからない
•大きい声は出るけど、柔らかい声で歌うのが苦手
•どのジャンルを歌ってもそれらしく聴こえない声
•声に魅力的な個性がない
書き出しておいて、我ながら、よくまぁ、こんなんで音大卒業して、そして歌い続けてきたと思いますが…
むしろ、これらをトレーニングによってクリア出来たからこそのボイストレーナーなのですが、正直、今は歌手としてよりも、声で悩む方のためにボイストレーナーとして役立ちたい思いの方が強いです。
原因は何なのか
これらの原因は、大きく2つに分けられると考えています。
音声障害と発声の偏りです。
音声障害
痙攣性発声障害
自分の声のどこが嫌いか、の箇所で『声が震える』と書きましたが、これは痙攣性発声障害という疾患だという事がわかりました。
わかりました、というのは、そんな疾患名がある事を長い間知らなかったのです。
そして知った時にはボイトレで改善傾向にありました。
本来ならば音声外来による診断と言語聴覚士によるリハビリで治療をしていきますが、私は、ボイトレで改善が見られました。
原因不明の疾患とされていますが、私の場合のボイトレ目線で考えられる原因は、呼吸の力みと、舌の力み、声帯を厚く使い過ぎていたこと、これらが大きな要因だったと推察されます。
構音障害
もうひとつは、構音障害になると思いますが、子供の頃から苦手な発音があり、特に『き』が言いにくかったと記憶していて、気づけば改善されていました。
構音障害の原因は様々ですが、私の場合は脳や発達に障害があるというより、発声や発音の問題でした。
発声に偏りがあった
これは、痙攣性発声障害にも関係しますが、自分の声の嫌いな要因は、声に必要な筋肉の使い方に偏りがあったという事です。
学生時代は声楽(オペラなどのクラシック)を勉強して、よく響く大きな声で歌える事を目指していました。
そうした中で、いつのまにか自分の本来の喋り声が、どこにあるのかがわからない状態になっていました。
当時習っていた先生に喋り声が悪いと指摘され、改善を試み、それもイタリア人の声のように喋りなさい、と言われ、そんな事などが重なったのか、自分の声が次第にわからなくなっていきました。
結論から言うと、自分の喋り声をイタリア人のようになる事を目指すのではなく、イタリア語ならイタリア語の発音の正しさが発声と関係している事を理解して取り組む事が重要です。
そして何より自分の声のニュートラルな場所を見つける事こそが1番大切です。
ボイトレしたら話し声が変わった
私がボイトレを受けて来た当初の目的は歌唱力アップのためで、現在はボイストレーナーとしてのスキルアップがメインの目的になっています。
しかし、ある時に、歌唱力アップが実は話し声の改善にも影響を与えていたと気付きました。
あるトレーナーのボイトレを受け始めて、しばらく経ったある時に自分のレッスンの録音を聞いたら、喋り声が良くなっている事に気付きました。
それは、とても嬉しかった事を記憶しています。
そのトレーナーからも、話し声が自然になってきていると言われました。
今までは、人と話す事にも、話し声に構えがありました。
それは、とても窮屈でもありました。
しかし、声が自由になってくると、話し声を意識する必要が全くないので、結果的に声が自然でありのままに近づいていったんだと思います。
自分の声の嫌いな部分や悩みが全体として改善されていきました。
その結果、コミュニケーションにおいての感情表現も自由に感じました。
今まで自分の声が嫌いだったと同時に窮屈でもあったんだなぁと気付きました。
ボイトレの何が良かったか
ボイトレの目的は、本来の自分の声を引き出す事に尽きると思います。
それが、声の自由の獲得であり、その人だけのオリジナリティであり、魅力だからです。
その事に根ざしたトレーニングを受けると、自分の声に対する違和感がなくなり、喋りにくさ、歌いにくさがなくなります。
すると、それはメンタルにも影響して、ありのままを受け入れ、自分をさらけ出せるようになります。
ありのままの声は聞いている人も気持ちが良いと思います。
どんなトレーニングがあるか
私は大きく2つの考え方をしています。
1.喉頭の筋肉をまんべんなく刺激する
2.喋り声や歌声でもあまり使用しないような裏声も含めた広い音域を出すようにする
この2つを柱にすると、話し声の高さを自在にし、大きさも比較的に自由な調整ができ、日常での支障はまずなくなります。
すると特定の出し方に固定しないので、状況に応じた声が無意識でも出せるのです。
これは、自分の声の嫌いな部分の改善にも関係している気がしています。
喉頭の筋肉をまんべんなく刺激するための3つの母音
ここから、具体的なトレーニング内容を説明していきます。
ちょっと難しいと感じる場合は、一番最後に簡単に出来るトレーニングも紹介していますので、そちらまで飛ばしても良いと思います。
以下の3つないし4つの母音に、その後に説明する子音と組み合わせた言葉で、喉に刺激を与えます。
組み合わせによって、発声に与える影響の違いを活かして、声を矯正していきます。
適切に取り組むと、物凄い効果を発揮します。
組み合わせ方によって、
連続して喋るのも良いですし、『ドミソミド』と音階にしてみても良いと思います。
それぞれの目的や効果を理解するのが大切です。
『O』(オ)
喉を緩めやすくする母音です。
喉が締まり気味の人は、この母音を多く使った練習が効果的です。
『I』(イ)もしくは『E』(エ)
声帯を薄くする、或いは閉じやすくしてくれる母音です。
そのため明瞭な声や高い声を出しやすくする母音といえます。
『A』(ア)
本来の自分のニュートラルな位置を感じやすい母音です。
『I』もしくは『E』と『O』の両方の練習を行ったあとの調整の母音です。
母音の順番ですが、声の状態によりますが、『A』から始めて、『I』『O』と続けてまた『A』に戻ってきます。
声帯を刺激する子音
『B』『G』
子音の中でも硬めのもので、Gのほうがより声帯の近くで発音されるため、声門を閉じる刺激を与える事が出来ます。
『B』も『G』も発音の瞬間に息の流れをとめて声帯を閉じやすくしてくれます。
また、喉を下げやすくするため、喉の締りが強い人には改善の効果があり、裏返りやすい人には声門をしっかり閉じる時間を作る事による改善の効果があります。
『N』『M』『W』
これらの子音は、子音の中でも柔らかめで、息の流れや声帯の閉じ方を緩やかにして、声を整える、ニュートラルにする効果があります。
硬めの子音のトレーニングの後に調整するとバランスが整います。
硬めの子音を連続して発音するのが難しいひとは、この子音から利用すると声が整いやすいです。
『F』『Sh』
これらは、無声子音です。
息の流れを強めて、声門閉鎖を緩やかにします。
喉の締りが強い人に効果的です。
母音と子音を組み合わせる
上に書いた母音と子音を組み合わせます。
『A』『O』『I』の母音と子音を組み合わせると
『NI』や『WO』、『MA』といった組み合わせができます。
そこに『ドミソドソミド』などの音階をつけます。
或いは、『NiNiNi』とか『WoWoWo』と連続して喋ってみます。
パトカーのサイレンのように音をスライドさせながら、そこに『NiNiNi』と言葉を乗せた練習も良いと思います。
そして、それを地声と裏声を交互に出してみます。
ポイントは、地声と裏声、3つの母音『A』『O』『I』を満遍なく行う事です。
モノマネで声を調整する方法
ここまでの説明がよくわからない方…
手っ取り早いモノマネの練習があります。
黒柳徹子、志村けんのひとみ婆さん、野原しんのすけ、そして時々、美輪明宏さん。
これらの方々(声優さん)の声マネが喉への刺激練習として良いと思います。
黒柳徹子、ひとみ婆さんは、声帯を閉じやすくします。
野原しんのすけは、声をこもらせて、少し緩める役割があります。
美輪明宏さんは、その中間で声を整えてくれます。
それぞれの方のマネを偏りなく行ってみてください。
モノマネに関しては、凄くざっくりな説明ですが、声の筋肉に偏りなく刺激を与えてあげる事が、声の出しやすさから、自身のニュートラルな場所を見つけ、声の解放から、自身の声嫌いの改善のきっかけになるのではないかと感じています。
子音と母音の組み合わせは、早い人は、その日に変化を感じますが、半年するとかなりの変化を感じます。
そして、難しい事を考えずに、その事だけをひたすら取り組むシンプルな作業でもあるのも利点だと思います。
自分のありのままの声を発見して、受け入れ、話す事や歌う事を楽しめる日々を送りたいですね。