正しい発声はあるか

ボイストレーナーのJUNです。

今回は、正しい発声って何かを幾つかの視点から探って記事にしてみました。

発声とは何を指すのか

歌の場合の発声について、考える時に混同しがちな事があります。

歌に問題があると感じた時、どこに問題があるかによって解決策は違いますが、大前提として大きく2つに分けてみたいと思います。

『本当はこう歌いたいのに、声が言うことがきかない』

こういう場合はボイストレーニングが必要

『なんかイマイチ曲のノリに合ってないよね』

こんな場合は音楽的なスタイルトレーニングが必要

テクニック(発声)に問題があるか、スタイル(音楽)に問題があるかを別の問題として考えます

下手に聞こえる原因が、発声なのか、リズム感なのか、こういった原因によって、発声か音楽的なことかに分ける方がシンプルになります。

けれども、そういった事を含めて、自分の声がよくわからないという人ももちろんいると思います。

しかし今回は、この『本当はこう歌いたいのに、声が言うことがきかない』という発声の部分について掘り下げます。

何が正しくあるべきか

声のタイプ

歌う声のタイプをハリウッド式の考え方に則り大きく4つに分けて考えます。

①チェストボイスが優しい

この方たちの特徴は歌ってて息が続かない人、優しい喋り方の人に多く、女性に多い傾向があります。

また、鼻をつまんで声を出したときに鼻に声がかかる人もこのタイプの可能性が高いです。

喋り声が高い人や背が低い人に多い傾向があります。

声帯のはり付きと息のバランスが悪く、声帯が開きすぎてる状態といえます。

②高音に向かって声がデカくなって裏返る

地声だけで張り上げた場合、高音に向かって正しい母音を保てない可能性が高い。

地声のまま上がって高音の声がデカくなってしまいコントロールが効かない。

地声でデカイまま上がって限界が来るとフニャっと抜けたように裏声になってしまう。

③抵抗なく裏返る

地声で低い声から出していって高い音に向かうときに、デカイ声にもならず、裏返るときも抵抗なく突然裏返るタイプ

④気付かぬままに裏声になっていく

地声で低い音から上がって境い目がなくそのまま裏声にいくミックスボイスが出来ているタイプです。

抵抗なく裏返る方は一定数いて、それがミックスボイスでは無い場合が結構あります。

①〜④は型であって良い悪いではない。

裏返る事はむしろ健全で、地声と裏声を分けて出せる事によって、融合が出来ます。

地声と裏声を分けて出せない場合は分ける事から始めるため大変です。

人間の声の低音の共振が大きいため、大きな胴体つまり胸に響くことからチェストボイスといいます。

声を下からスライドさせて、胸に響かなくなったあたりの高さからミドルボイスとかミックスボイスといわれている領域に入ります。

ミックスボイスの音域は地声と裏声の成分が必ず混ざっています。

人の感覚によって裏声に感じたり、地声に感じたりする事、あるいは割合によっても変わっていきます。

けれども、両方の成分は必ず入っています。

ミックスボイス〜声を一本化する条件とは

ミックスボイスは地声の低いところから裏声の高い音までを切れ目なく出す事が出来ます。

中音域から高音域にかけては、ミックスが出来た方が声は自由になります。

その条件は3つあります。

①音量がかわらない

②声帯閉鎖の仕方があまり変わらない

③母音が変わらない

この3つが低音から高音まで均等に出せる事がミックスボイスを可能にします。

日本人は母音に対する認識が弱い

日本人は母音に対する認識が弱い傾向にあると言われています。

母音を正しく歌うと声のトラブルが減ります。

例えば、日本語の『ア』に近いものを発音記号で表すと

ə / æ / ɑ / ɔ

少なくとも4種類はあると思います。

といいますか、日本人が喋る『ア』が人によってこれくらい開きがあっても、日本語として認識出来ます。

しかし、日本語以外では、この4つを使い分けている言語が多くあり、外国人からすると日本語の『ア』が人によっては『æ』聞こえたり、『ɑ』に聞こえたりして、聞き取りにくいと思われるかもしれません。

それぐらい寛容な発音なのですが、歌う上では、高さによって母音がズレてしまう事がトラブルの原因、裏を返すとズレを修正する事で声の安定を増します。

理想的な発声の三要素

①声帯、②息、③共鳴が1対1対1の割合であることが条件になります。

この3つそれぞれがバランスが悪いとどうなるかを書いてみたいと思います。

声帯の働きすぎ

喉が痛そうだったり苦しそうな声になる

声帯結節やポリープができる発声

高い声になった時だけ突然暴れ馬のようになってしまう場合もある

共鳴が働き過ぎ

ユニークなサウンドになる

あえてユニークにしたい場合はOK

しかし、やり続けると病気のリスクが増える

あと、男性オペラ歌手にありがちな喉を極端に下げてキープする状態を続けると、次第に筋肉が固まって高音が出なくなったりする

逆に喉を上げすぎても、同様に喉を痛める原因となる

息の働きが悪い

声帯を厚く使って声が突然裏返って抜けちゃう時は息が多い場合がある

ハスキーボイスっぽくなるので、敢えて使う人もいるかもしれないが、コントロール出来ない場合は声門の閉鎖に問題がある

このバランスが取れていると、低い声から高い声まで境い目なく一本化出来ます。

するとなんでも歌う事ができます。

ミックスボイスボイスの条件はこの要素を満たさないと難しいです。

敢えてバランスを変えて歌うとしても、ペースはバランスが整っているほうが健全です

ボイトレの目指すところ

ボイトレの目指すところは、この3つのバランスが整ったところをゼロポジションにして、自分の声を自由自在にしてあげる事です。

これこそがボイトレをやる意味となります。

すると、声を張りやすいところでワザと抜いたり、張りにくいところで張って、フレーズに歪みを作ってといった多彩なニュアンスを出すこともできます。

ただ、正しい発声でも声帯の形状によって決まる声の質は持って生まれたものだから変える事はできない、という面はあります。

重要な事は裏声を出している中に地声の筋肉を働かせる事をグラデーションのようにできるかどうかで、どの高さも自在に出せるようになる事です。

喋り声が枯れる人は、仕事柄で感じ良くするために声を高めにしようと力が入ってしまっているのがクセになっている事が多くあります。

すると次第に自分の本来の声がわからなくなり、自分のありのままの性格を声に乗せる事も難しくなります。

声帯は痛覚が無いため、オーバーワークしても痛みは感じません。

痛みを感じるのは声帯周辺の筋肉だったりします。

自分のノーマルな喋り声は世界にたった一つの素晴らしい個性ではないか

あえて声を作って、自分じゃない誰かになる必要はあるでしょうか。

確かに可愛く聴こえる声、カッコよく聴こえる声があって、ウケの良い声があるのも事実です。

でも、そのままを活かした方が、自分の声で人に何か伝える事が出来るのではないでしょうか。

歌声になった瞬間に別人のように変える必要はないんじゃないかと思う事があります。

敢えて声色を作るとしても、ニュートラルが常にベースにある事が、自分の本来の声を失わず、壊す事なく使い続けるために大切だと思います。

ボイストレーナー JUN

声に何度も泣かされた過去を持ち
生徒と心から歌う喜びを共有する日々

大手の音楽教室で講師経験後に独立。
入会率と継続率の高い優秀講師としてレッスン手法をセミナーで紹介される。
中学・高校の音楽科教員の経験からレッスンのわかりやすさというところでの評価を受けている。
これまでに、現役シンガー、ボイストレーナー、音大生(音大入試)、オーディション対策など、数多くの人数を指導。また企業からの依頼を受けアーティスト育成も行っている。

レッスンしてきたことのあるジャンル:
J-POP・洋楽・PopRock・ミュージカル・
Classic・民謡(発声指導のみ)

東京都言語聴覚士会準会員・中学高等学校音楽科一種免許保有
修了講義:”Belting &Effect” ”Motor Lerning Theory in Vocaltraning” “Classical Singing” “Collaborative work with Vocal coach and SLP”

関連記事

PAGE TOP